2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ああノ会作品、爛柯編集部

十干行「リザベーション」の巻萩ゆらぎ南無芋虫の胎蔵界 夏生 ゆるりと語る月の座の客 浩司 薄絹の身に沁みてゆく秋の声 信子 甕のなかにはかなしみを貯め 夏 ウ 黒潮のふくらみふくらみ南風(はえ)孕み 浩 裸足の脚に跳ねる銀鱗 信 どこまでも難民テント地…

歌仙行第4章「闇の座/雑(ぞう)の時代」(初出「俳句未来同人」平成8年8月号)

…… うつつには思ひも寄らぬ筆とりて夢に裾野の雲を描きをり(曽宮一念翁)○闇。俳諧雑誌『杏花村』の旧号のページを繰っていると、「闇」の字の頻出に驚く。…… 新樹匂ふ闇へと髪の溢れけり/巨きうつばりきしむ短夜 隆/としを 花闇の底で唖唖といふ永遠/踝(…

風交、連句がゆく

手元に「野村牛耳連句集 摩天樓」(昭和五十年七月六日発行、編集・東京義仲寺連句会(山地春眠子))がある。 その中の牛耳野村愛正略伝(作製・石川宏作)によれば、明治二十四年八月二十一日、鳥取県岩美郡大茅村大字楠城村(現国府町)の農家に生まる。…

歌仙行第3章「翳の如く」(初出「俳句未来同人」平成8年6月号)

○……亡くなった牛耳さんに連句初学者の手習いのための「二句連句」の説がある。……海音寺潮五郎氏の一句〈一本の松たけだけし枯野原〉を取り上げ、〈一本の松たけだけし枯野原/寒鶴一羽国境の山〉〈一本の松たけだけし枯野原/猟銃抱く指のマニュキア〉などなど…

爛柯通信その一「天上の花」   村野夏生

○一句はもちろん。 二句行間に生まれる詩を楽しむ。 三句目に転じあり。そして、 メンあり、オリあり、 断片詩つながって、多様性の一小宇宙が成る。「三十六歩、一歩も帰らず」がこの町の通行手形(パスポート)である。 ○対話詩である。 断片詩である。 巡…

歌仙「黄金の房」の巻

娘かおり、博士となる春雨や揺れて博士の黄金(きん)の房 夏生 弥生の瞳満つるよろこび 蓼艸 はだれ野を夕陽一閃切り裂きて 手留 根つき三ツ葉の売れゆきのよき 浩司 薄月を描き足して閂(かんぬき)を差す 那智 ウスバカゲロウ生(あ)るる岸辺に 南天 ウ …

半歌仙「旦暮の詩」   三唫

外寝して鼾絶やさぬ遍路かな 千年 蚊遣りの煙青く地を這う 文乃 旦暮(あけくれ)の詩の団扇に滲みいて 那智 ふと甦る第三楽章 文 大臣にぶら下がり聞く月のこと 千 毀誉褒貶は水の澄むまま 那 ウ 初猟は銃身で顔冷やしたり 文 塩狩峠でどぶろくを噛む 千 時…

脇起半歌仙「夏の夜」や   村野夏生捌

夏の夜や崩れて明けし冷やし物 翁 ハーブの香する緑陰の卓 夏生 臍の穴天に向かひし赤子ゐて 浩司 帝力ナンゾ我ニアランヤ 夏 大皿に小さき玉兎を遊ばせる 浩 古道具商の格子戸に蔦 夏 ウ 木琴の音の身に沁むるオリンピア 浩 謎の黒絵はエトルリアから 夏 夢…

歌仙「千の神」     村野夏生捌

六道へ向けきりもなし花吹雪 川野蓼艸 海市ざらざら埃積む辻 村野夏生 あごひげの春の戦士も休みゐて 瀬間信子 偶然という眼光らせ 坂手手留 初月夜ひらりと猫は明日へ飛び 大下さなえ 畳を踏みし足そぞろ寒 小向敏江 ウ 皀角子(さいかち)のゆくらゆくらと…

ああノ会連句、爛柯編集部

歌仙「思ひ寝」の巻 夏生捌 炎天やなかぞらに河立ち上がる 那 智 海のかなたの英雄(ヒーロー)の夏 手 留 空蝉の爪ていねいに外しゐて さなえ 生の始めを記憶している 夏 生 濁り酒月に喇叭手たりしこと 蓼 艸 墨絵ほのかな捨扇なり 宏 ウ 爽涼を奏でつつ矢…

歌仙行第2章「未来の風」より(初出「俳句未来同人」平成8年4月号)

○それなんだ!お前の小脇に核弾頭/少年夢見る風呂屋の番台 イリオモテヤマネコの住む闇を行く/明るい血出る僕の傷口 前者は去年二月の「ザ・連句'95」(主催・大下さなえ)の、後ろはホンの少し前この二月の「連句フェスティバル」(主催・青木百舌鳥)の、…

六月十八日、浅草寺境内「伝法院」大書院で興行された、第十八回青時雨忌追善正式俳諧に出席。

土屋実郎氏、小林靜司氏よりご案内を頂き、正式俳諧を初めて体験できた。 青時雨忌追善正式俳諧は、昭和の俳諧師・清水瓢左を偲び都心連句会 湘南吟社が毎年伝法院で催している。清水瓢左は明治三十一(1898)年、長野県松代生まれ。松濤軒柳斎に連句を…

爛柯(RANKA)ノ辞   村野夏生

爛柯。 愛用の『大辞典』によると、 〈木こりの王質が四人の童子らの打つ碁をナツメを食べながら時を忘れて見ていると、斧の柯(え)が爛(くさ)り、帰ってみると当時の人は誰もいなかったという「述異記」の故事による〉とあって、 囲碁にふけって時のたつ…

歌仙「天国自由切符」の巻

蒲公英の余せる乳の冥さかな 夏生 二輪車で往く桃園の路地 宏 おお雲雀 定形否とよ否定形 那智 能面の裏穴ばかりなり 蓼艸 青騎士の生れけり蒼き月満ちて 宏 潮のリズムに秋を聴く人 夏 ウ 氷川丸より鈴江倉庫へきちきちと 蓼 いとけなけれど愛の小夜曲 那 …

第1章「歌仙行」より(初出「俳句未来同人」平成8年3月号)

○ホームに降りたつと、前の車輛から運転士が駆けてきて、切符を受け取る。……一緒に降りた三、四人のおばさんの集団に「歌仙ノ滝はどちらでしょう?菊間川へ出るには?」と聞くと、駅舎に背を向けて山の方を指した。……川に沿ってのぼって行けば、歌仙という滝…

*村野夏生ー俳諧の軌跡

「村野夏生ー俳諧の軌跡」として、まず「村野夏生連句批評 歌仙行」(平成13年(2001年)3月20日発行。著作者・村野夏生、発行人・小林靜司、編集・ああノ会、発行所・ああノ会「爛柯」編集部」)の各章から、夏生さんの現代連句に対する熱いメッセ…

「歌仙行ーああノ会連句」編集方針

連句結社「ああノ会」の作品、連衆の留書、雑記等を記録する「ああノ会作品、爛柯編集部」 他結社、他分野の方々との交流、書籍等の断片を記録する「風交、連句がゆく」 ああノ会創設者村野夏生氏の残された作品の抜粋を記録する「村野夏生ー俳諧の軌跡」 こ…