2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

爛柯編集部ー三鬼のガバリ  市川千年

「白の民俗学へ 白山信仰の謎を追って」前田速夫元「新潮」編集長(河出書房新社 2006年)の「死と再生の民俗」の項に「・・・ちなみに、藩政下の金沢で真夏の暑い時分、「ガバリ、ガバリ」の呼び声で売られた氷は「白山氷」と言い、延命長寿、無病息災の呪…

胡蝶「冬を研ぐ」の巻  川野蓼艸捌

冬を研ぐオ 清らかに冬を研ぎをり冬の川 川野蓼艸 寒九の水を択ぶ刀匠 篠見那智 シグナルの青の揃ひし東雲に 長岡蓬亭 傾く地球夢の覚めぎは 小池舞 紫蘇の実のつぶひとつぶの掌よ 粉川蕩人 リセットボタン押して晩秋 蓼艸 ナ 月見酒頤やさしき人の来る 那智…

胡蝶「櫓の音は」の巻  川野蓼艸捌

櫓の音は オ 櫓の音は去年と今年を繋ぎ行く 川野蓼艸 凍てたる闇を衝いて杉の秀 篠見那智 鍋奉行旨き匂ひをたぎらせて 市川千年 猫たち奥に追ひやっておく 小池舞 百年の月明を飛べ紙飛行機よ 粉川蕩人 秋の浜辺を駆けくだる子ら 瀬間文乃 ナ 忍草誰も知らな…

胡蝶「魂の在所」の巻  川野蓼艸捌

魂の在処 オ三秋/ 荻窪の十坪ほどの芋嵐 川野蓼艸 晩秋/ 高架を越ゆる霜降の月 日高玲 晩秋自 新しき皮袋には古酒入れて 坂根慶子 自 トーテムを建て祝ふ生誕 篠身那智 / 竪琴の音は野づらを渡り行く 阿武透子 夏半 夏薊抱け刺避けて抱け 織田紋女 ナ 夏…

歌仙「起爆装置の糸」の巻  川野蓼艸捌 

起爆装置の糸 オ 三冬自 夢浅く薄墨色の枯野かな 川野蓼艸 初冬自 左手(ゆんで)をかざす鶴渡る果 篠見那智 他 鉄筆を荒き鑢に磨ぎ出して 日高玲 / 作文集は二番目の棚 小池舞 三秋/ 月光にタイムカプセル開くなり 市川浩司 仲秋自 宇宙意味する秋桜(こすも…

歌仙「泣くなゴンシャン」の巻    川野蓼艸

嘗て村野夏生がいて本誌にも文章を書いたり、自分の捌いた連句作品を載せていた時代があった。しかし彼は難病となり文学に生きる者が、考えている事が言葉にならないという地獄の苦しみに耐えながら亡くなった。彼の立ち上げた「あゝノ会」は衣鉢を継ぐ者達…

源心「蓑虫の夢」の巻

蓑虫の夢 歌うよう呟くように霜の声(文乃) 猫の飛びつくロングマフラー(真史) アルバムの朋はいつでも笑顔にて(舞) 創立五十周年を出で(蓼艸) ウ 月渡る分水嶺のしじまなる(千年) 手編みの帽子爽籟に享く(那智) 胸を刺す痛みもありや鬼薊(文) …

歌仙「アンモナイトのため息」の巻

アンモナイトのため息 胸坂や秋のいくつもわだかまる(那智) ふいにとぎれるカナカナの声(文乃) 遠鼓ちちぽぽと鳴る望月に(蓼艸) 古武術活かす走法を練る(千年) おだてれば象も空飛ぶ世なりけり(蕩人) ポケットの無い夏のエプロン(舞) ウ 凛とし…

歌仙「バグダッド時刻」の巻

バグダッド時刻 啓蟄や人鉄棒にぶらさがる(千年) 空紺碧に匂ふ紅梅(蓼艸) 逃水を追ひて国境超ゆらむか(文乃) バックパックに詰めるクッキー(舞) 大盃は金繕の二日月(那智) 若書きなのに旅路の秋と(蕩人) ウ 蓮の実を飛ばししじまを深めたり(文…

歌仙「指の先にも魂」の巻

指の先にも魂 某日冬くらくらと血の奔りたる(那智) 金鵄勲章値切る襤褸市(蓼艸) 哲人の狭き門より表れて(舞) 甦りたる川の清流(千年) 寝ころびて博物誌読む月明り(雅子) 男いま乗れ霧の天馬に(冬人) ウ 雁渡る頃なり姉の嫁ぎしは(蓼) 香しくま…