胡蝶「冬を研ぐ」の巻 川野蓼艸捌
冬を研ぐ
オ 清らかに冬を研ぎをり冬の川 川野蓼艸
寒九の水を択ぶ刀匠 篠見那智
シグナルの青の揃ひし東雲に 長岡蓬亭
傾く地球夢の覚めぎは 小池舞
紫蘇の実のつぶひとつぶの掌よ 粉川蕩人
リセットボタン押して晩秋 蓼艸
ナ 月見酒頤やさしき人の来る 那智
言はずもがなの言葉飲みこむ 蓬亭
不器用な恋を削ぎたり鋭角に 舞
我が骨はづし彼の骨接ぐ 那智
補陀落はまだかと舵手に聞いてみる 那智
油小路に矢印のある 舞
獄窓にふと振り仰ぐ汗の月 蕩人
反戦の声遠くかすかに 蓬亭
死ぬ人の当り散らしや息白く 蓼艸
アルバム黄ばみ長き来し方 蕩人
エンゼルの今飛び降りる避雷針 舞
前衛舞踏ボロを着て出る 蓬亭
ウ 父よ母よ汝よ我よ炎帝よ 那智
脱ぎたる蛇の見返りの街 舞
ビー玉の転がることも時国家 那智
蝶々来いと万国旗振り 那智
花微動だにせず吾妹の胸薄し 蓼艸
かたびら雪をまとひ舞ふなり 舞