源心「蓑虫の夢」の巻

   蓑虫の夢


歌うよう呟くように霜の声(文乃)
 猫の飛びつくロングマフラー(真史)
アルバムの朋はいつでも笑顔にて(舞)
 創立五十周年を出で(蓼艸)

月渡る分水嶺のしじまなる(千年)
 手編みの帽子爽籟に享く(那智
胸を刺す痛みもありや鬼薊(文)
 からまり合ってジジとジョジョ行く(蓼)
純愛の答えはいつも不道徳(真)
 三島由紀夫の遺稿のインク(文)
隠処に一日おきの躁と鬱(舞)
 マテウス・ロゼ 紅に積み(那)
花吹雪韃靼海峡渡りゆく(文)
 大統領は蝌蚪の中より(蓼)
ナオ
西方にかかりし橋か暮遅し(那)
 蜃気楼より父母の近づく(蓼)
マヨネーズ何にでもかけいけすかぬ(舞)
 音階自由自在の放屁(真)
水風呂に収まる陰嚢(ふぐり)夏深し(千)
 再びの汗君に届けむ(舞)
梵字で写す心経のあり涙川(那)
 秋津島にも石の回廊(千)
元親の槍の光芒十三夜(真)
 蓑虫の夢さまたげずおけ(舞)
ナウ
誰それが誰それを生み肌寒し(蓼)
 丘の向こうは兵隊の列(文)
先生の御声と影よ花筐(那)
 こんな所に何故落し角(蓼)


(平成17年11月26日首尾 於・西荻窪 遊空間)

 源心(げんしん)二折・二十八句 二花二月 東明雅案。