胡蝶「魂の在所」の巻  川野蓼艸捌

      
      魂の在処


オ三秋/ 荻窪の十坪ほどの芋嵐        川野蓼艸
 晩秋/  高架を越ゆる霜降の月       日高玲
 晩秋自 新しき皮袋には古酒入れて      坂根慶子
   自  トーテムを建て祝ふ生誕       篠身那智
   / 竪琴の音は野づらを渡り行く      阿武透子
  夏半  夏薊抱け刺避けて抱け        織田紋女
ナ 夏自 置き去りにして来た様な積乱雲    粉川蕩人
   /  カップの縁の口紅の跡         蓼艸
   半 接吻は回転ドアの中だけよ        蕩人
   半  社内文書に挟む付文          玲
  冬自 榾くべてどっと崩れて月昇る       透子 
  冬自  そのかみ僕は大和雪原         慶子
   他 マンモスを追うて異界の村に入る     玲
   /  亡母は展翅箱に刺されて        蓼艸
 初春自 ミモザ散る咎ありてこそ我は哭く     那智
 初春自  野焼きの煙通せんぼする        紋女
 仲春/ 日本よ覚醒せよと雪崩くる        蕩人
   /  スローフードは麺が家元        慶子  
ウ 夏他 足萎えの目しひ耳しひ汗しとど      那智
   自  魂の在処を探す屋根裏         玲
   自 週刊誌お宝として残しおく         慶子 
   半  貴方の涙すぐに固まる          蕩人
 晩春半 共に愚者いつの時代も花の散る      玲
 三春/  白馬に乗って東風の吹き来し      蓼艸


 平成十四年十月二十七日(日)於・西荻「三ツ矢酒店・遊空間」 

昨日から平成14年頃からの、ああノ会の作品を掲載。私の怠慢で、「爛柯」13号(村野夏生追悼号 平成15年(2003)3月12日発行)以降「爛柯」は出していない。その代わりにこのブログで随時13号以降の作品等も掲載していく。
 蓼艸さん捌きの作品は、自他半、3季(初春、仲春、晩春)の式目の基本を併記し入力されているので、連句実作者には有難い。(千年)