半歌仙「古代人の虫歯」の巻 

東海道辿りて灼けし鼻の先(浩司)
 水に汗かく河馬と対面(夏生)
幼年期地球に似たる火星とは(信子)
 角まで行ってジャンケンポン(木々)
待ったなし三十代はあとわずか(三津子)
 職辞したれば自由なる月(ハイハイ)

柿色の朝顔の名は団十郎(三)
 私の彼は藤十郎ホーリー
夜の道携帯電話泣きながら(木)
 両手に抱く熱燗徳利(信)
「義」とつけば気付かれぬよう気を配り(ハ)
 郵便配達今日は茶髪よ(夏)
月涼しうさぎにダンス教へたり(あのこ)
 赤児の尻に舞ふ天爪粉(信)
モンゴルの草原の香の刺繍です(浩)
 貴種流れつくポンヌフの岸(信)
死市ひとつ掘り出して島に花の刻(夏)
 古代人の虫歯の痕跡(あと)に東風(ハ)

(夏生捌 平成9年7月13日首尾 於東京渋谷 種月庵)