半歌仙「旦暮の詩」の巻  市川千年捌

外寝して鼾絶やさぬ遍路かな(市川千年)
 蚊やりの煙青く地を這う(瀬間文乃)
旦暮(あけくれ)の詩(うた)の団扇に滲みゐて(篠見那智
 ふと甦る第三楽章(文)
大臣にぶら下がり聞く月のこと(千)
 毀誉褒貶は水の澄むまま(那)

初猟は銃身で顔冷やしたり(文)
 塩狩峠どぶろくを噛む(千)
時代劇専門チャンネルガイド欲し(那)
 トランクの鍵忘る踊り子(文)
ラブレターあれじゃ暗いと言はれたる(千)
 リストカットの数だけの恋(文)
冬麗の子の宮に月満たすべし(文)
 とらひこと呼ぶ惑星のあり(千)
六本木他生の貌の行き交ふて(那)
 浜辺にまるき玻璃の一片(文)
花万朶みな老い易く老い難き(那)
 ブログ発信春の曙(千)

(平成18年(2006)6月25日首尾 於・西荻窪 遊空間)
 日野草城「俳句はもろ人の旦暮の詩である」