十干行「失神中」の巻

雪降らば会はめと言ひし乙女子よ               夏生
 寒椿喰み膝出せる脚                      信子
廃線のプラットホーム月渡る                   三津子
 二十世紀梨(ニジュッセイキ)がころがってゆく        浩司

三角縁神獣鏡に秋の雷                       信
 失神中のポケットヴィーナス                    浩
ジョン・レノンの優しい声で囁いて                 三
 裸の肩に揺れるカーテン                      信
花降るや螺旋描いて天に行く                    仝
 遠足の日の海のお宝                        浩

(衆議判 平成十年一月十一日 於東京渋谷・種月庵)(爛柯五号)