半歌仙「ビワハヤヒデ」の巻

ビワハヤヒデは伏目の馬よ雪解空       敏江
 春草揺れて光る海風              夏生
自家味噌でわが蜆汁うまいな          手留 
 粉引の皿の罅あたたかし            さなえ
半月が落ちたかたわれ呼んでゐる        宏
 紫蘇の実に染む指さきの色           信子

戦場は薄野濡れしピアノ弾く             仝
 専業主婦の座を捨てました             手
髭剃りゐてふっと逃げたき心湧き           夏
 ふたつ連れ飛ぶ人魂が怖い             さ
病む姉の裸足の爪に滑る月光            信
 頬赤き子の食むゆすら梅               さ
みちのくのイギリス海岸砂粗く             夏
 尾でしゃべる犬と廻り道する             敏
「鯨部隊」は若き夜学子多かりし            宏
 花渦巻ける南国の浜                 手
土つけし双葉の開く二拍子で              さ
 あたり一面蜜蜂を聞く                 執筆

(夏生捌 平成七年二月二十六日首尾 於東京中野・如庵)(爛柯五号より)