川野蓼艸師 アカデミーヒルズで講演

 7月4日、午後7時過ぎより、ああノ会の阿武あのこ(秀子)さんがスピーカーを務めるアカデミーヒルズ 六本木ライブラリー「ライブラリートーク」(六本木ヒルズ49階)で、同会代表・川野蓼艸師が「和歌から連句へー日本文化の五音七音のリズムの行方」と題し講演された。講演内容は、
1、百人一首から連歌俳諧連句
2、連句の起源について……日本書紀万葉集
3、連歌の歴史と有名作品……水無瀬三吟
4、江戸時代の俳諧……松尾芭蕉と『冬の日』
5、連句の約束事
6、現代の作品紹介と実践へのいざない

 進行役の阿武さんとの絶妙の掛け合いのもと、我等の蓼艸師が、時代を辿りつつ現代連句に至るまでの、この文芸の魅力を弁舌さわやかに披露。水無瀬三吟、『冬の日』の「狂句こがらしの」の巻、『猿蓑』の「初時雨」の巻、そして蓼艸師が捌かれた歌仙「きり・はたり・ちゃう」の巻、歌仙「泣くなごんしゃん」の巻の全巻のコピーを受講者に渡され、花、月、そして恋の座という連句の核心部分のおもしろさをこれらの実作で示された。違う時代の連歌連句作品を1つの講演で提示されたわけで、今までこういうことはあまりなされていない画期的なことではないかと思った。
文乃さん、青玉さん、しづさんも傍聴。連句経験者にとっても新たな発見の多々あるご講演だった。


マッチ箱並びて美しき街となる  夏生
 骨肉といふ兄と妹        久美子
さえざえと相対死の素手四つ   那智

 
 歌仙「きり・はたり・ちゃう」の巻にある上記の付け合いを恋の座の説明で行ったり、その前、尾張でまかれた冬の日歌仙の説明では、式目に触れつつ、「第三「有明の主水に酒屋つくらせて  荷兮」の「酒屋」は「さかや」ではなく、「しゅうや」というかもしれないことを名古屋の杉山寿子さんという方から聞いた。杉山さんは、昔おじいさんから「しゅうや」は臨時の宴会場のことをいうと聞いたことがあるそうだ。今でいうオープンカフェのようなもの。そうすると、「朝早く棟梁(主水)に、芭蕉さんの歓待のために、オープンカフェを作らせましたよ」という意味とも解釈でき、荷兮の芭蕉さんに対する挨拶句になる」と説明。これがより精緻に確かめられたら芭蕉連句評釈の新説誕生・・・?
講演後、全く連句を知らなかった(教わってこなかった)受講者もかなり興味を持たれたようで、蓼艸師、あのこさんにいろいろ質問されていた。
ともあれ、虚に遊ぶ連句の一座が、グローバリズムの牙城でもある六本木ヒルズで愉しいひと時を過ごさせていただいた。蓼艸さん、あのこさん、どうも有難うございました。(千年)