半歌仙「五月雨に鳰」
マロニエの花揺れてゐるらいてう忌 青玉
青梅籠に盛つて捧げん 文乃
五月雨に鳰の浮巣も流されて しづ
飛べると思ひ跳んでみた人 千年
あこがれの玉兎に付けし足の跡 し
隣家と供に庭木刈る朝 青
ウ
初潮に夢をうかべて眠りたり 文
女学生らの声の冴えゆく 青
バルト海クルーズ誘ふ未亡人 千
黄土に並ぶ遺体百万 青
コーリャンの酒酌み交す仲間たち 文
すべてはテレビの中の出来事 し
夏月を浴びてコーラン朗々と 青
目覚めてみれば蜥蜴となりぬ し
外科室の扉静止のままにあり 文
父愛用の時計カチカチ 千
花吹雪幼児の頭の土くさく 青
丹精込めた春の弁当 し
(平成20年5月24日首尾 於西荻窪 千年捌)
いつも会場にしている酒屋さんの2階のフリースペースへ行ってみると、なんと山形と高知の酒の利き酒会が開催されていた。こちらの手違いで予約ミス。が、これ幸い?と、さっそく私の地元でもある高知の司牡丹を試飲しながら、同社の営業部長と世間話。そうこうしているうちに連衆が集合し、さてどうしようと連句難民が西荻窪を彷徨うこと10分余り。昼からやっているしゃれた居酒屋を会場と決め、発句の前に生ビールを注文。さすがにオモテ六句が終ってから酒、というわけにもいかない。
「今日はらいてう忌」と青玉さん、ほほうと言いながら、先日青玉さん一座と歩いた隅田河畔に咲いていたマロニエの話が出たところで、取り合わせの発句完成。しづさんが、「父とらいてうさんは昔一緒に平和運動をやっていた」とポツリ・・えっえっー!なるほど、らいてうさんは戦後も活躍されていたか。
司牡丹の三男坊が漫画家の黒金ヒロシ、司牡丹の屋号は黒金などと薀蓄披露すると、青玉さんが、「昔女優だったとき黒金さんと対談したことがある。アカべエはあっかんべえのことでしょう、と言うと喜んでいた」とポツリ・・えっえっー!
全く、連句は出会いの文芸だという思いを最近とみに感じているところだが、出会いの質が重層的になっていく感覚を味わう。
こういう、しづさん、青玉さんをスカウト?してくる文乃さんのプロデュース能力!
しづさんの大変気にしていた清澄公園の鳰も半歌仙に登場していただけた。ちょっと海外物の打越という向きもあるが、土くさく、丹精込めた春の弁当で無事満尾の巻となりました。(千年)