「師 田辺一鶴」  竹林舎青玉


  師匠田辺一鶴は御年78歳、講談界一の長老となった。
 「生きるが勝ち」と師匠はいう。
 来2008年4月で講釈師生活55年になるそうだ。
 子供の頃から強い吃音で、治せるものならと25歳の頃に
 12代田辺南鶴が主催する素人向け講談学校という教室で
 軍談修羅場読みという話法に出会う。
 息長く、リズミカルに張り扇でパパン パンと釈台を叩きながら
 抑揚をつけて、唄うが如く読み進めて行く話法で、七五調の文字
 が順々と言い立てられ、調子が上がり文字は跳ねたり沈んだり
 パパン パン パンと心地よい。
 日常生活でも支障をきたす程の難阻性吃音の師匠にとっては
 悪戦苦闘の日々だったことは想像に難くない。躯をよじったり揺り動かして
 言葉を押し出したという。それが今の高座でのパフォーマンスにつながって
 いる。
 当時の誰が講釈師田辺一鶴を想像出来たろうか。
 今、師匠の頭の中は「55周年記念」に向けての想いが駆けめぐっている。
 師匠の壮大な妄想を畏れつつも、何とかイベントを成功させたいものだと
 思っている。