半歌仙「仮面流血」の巻  千年捌

小春日の遊び心や夏生の忌(千年)
 ふいに降りくる木莵の声(文乃)
逃げてゆく丸き時計を追ひかけて(真史)
 汽車の行先誰も知らない(舞)
山の辺をとりまく詩詞を射すは月(那智
 蓑虫出でて語り始める(真)

くにへ送る金婚といふ今年酒(千)
 限界集落上がる産声(文)
もの縫ひ来し母たちにいま泉湧く(那)
 流れにまかせあっけらかんと(舞)
涙出ぬ仮面流血する心(真)
 防空頭巾押入れの中(文)
雪すかし満月は今天頂へ(文)
 ほのぼの甘き鯨鍋なり(千)
新しき地図帳買ひて捜す町(文)
 天使落花の午後の鐘の音(文)
幻影の後姿に花満ちて(千)
 童のやっと触れる蝶々(舞)

(平成18年11月25日首尾 於・西荻窪 遊空間)