歌仙「淡彩極彩」の巻  川野蓼艸捌

     淡彩極色


オ  万緑よ身を躍らせる我を抱け       瀬間文乃
    蛍つつめば透く指の間           川野蓼艸
   蟹走る纜を解く刻の来て           篠見那智
    スタヂアムよりどっと喚声         小池舞
   年表を繰れば八朔とはなりぬ        粉川蕩人
    淡彩極彩混じる花野よ           舞
ウ  死海の上満月金を滴らせ           文乃
    耳の底には秋の虫棲む           文乃
   少年は鬱に落ちゆくゆるやかに         舞
    弓なりとなり拒む愛咬            文乃
   反故とする約束ひとつ夢疲れ         那智
    あはれをかしと酒の回流          那智
   洗礼を切に願ひし貂と月           舞
    時は熟して我に雪降る           蕩人
   戒厳令敷かれしことも遥かなり        文乃
    下駄箱にある下駄とドタ靴         舞
   花守は僧形にして篝焚く           那智
    爺はお前が蝶になる日を          蕩人
ナオ 山笑ふ頃のリボンは純白です         舞
    私めげない刹那主義です          那智
   シシリーのマフィアは何時も海を見る     舞
    アテナイの丘めぐる廻廊          文乃
   かんばせに受けし噂の石礫          文乃
    贈り物には薔薇を奇数に           舞
   刺青の道具を玩具箱に入れ           蕩人
    泪の色に琵琶湖あふれて           那智
   手鏡に映す枯野と美貌とを           舞
    殺意に媚薬 秘薬霊薬            那智
   亡き人のもの言ふ月の宴に坐し         那智
    さやかに誰ぞの足引っ張るか         蕩人 
ナウ 重陽にデデデッポーと鳩時計           舞
    ドッグフードを猫に与へて           蕩人
   若者は日々ま新らし空紺碧            那智
    Tシャツに書くロゴは「変身」          舞
   図書館に突っ伏してゐる花の昼         文乃
    今日も明日も蜃気楼立て!          那智

   平成十六年六月二十七日(日)  於・西荻「遊空間」