半歌仙「懐手して阿吽」

  懐手して阿吽


せせらぎや鳥獣戯画の麻のれん   千年
 白雨くるぞと子ども等の声      文乃
ゲラ刷りに汗滲ませて赤入れて    美世子
 路面電車の止まる駅前        つる路
風呂帰り月どこまでもついてくる    紋女
 手折りてかざす桔梗コスモス     あの子

色鳥の木の葉のごとく飛び立てり     仝
 鯉の背つくる丸き波紋を         紋
お茶の水は水に近い」といふ詩人     千
 未来は指にからむ約束          美
地の果ての墓標にきざむ名はふたつ    文
 種まく人の顔の淡々            つ
凍月を砕いて火酒を割ってみよ      文
 懐手して阿吽とつぶやく          あ
着ぶくれたままで歌ふよ讃美歌を      美
 でちゃった時はぽっぷんぷん      紋
青猫の花天井に登りゆく           仝
 変哲もなく暮れる春昼           つ


(平成19年7月28日首尾 於荻窪・遊空間)


 鶴、鴎、孔雀、雲雀やニッポニア、5人の美女に囲まれて、下男のようにカチカチかっちん捌いてしまった・・・。何年ぶりかで再登場の紋女さんの花の句を「白猫(後で青猫に治定)のハナ(花)」が天井に上っていくなどと誤読の鉄砲球みたいな読みまでしてしまった。今年から参加のつる路さんの「変哲もなく・・」の挙句で、冷や汗ものの半歌仙も無事満尾。講談師のつる路さんが、付け句の間合いを図りながら一番静かだったのが印象的だった。
 その田辺つる路さん、名を「竹林舎青玉」と改め、十月に黒門町本牧亭(6、7、8日)、お江戸日本橋亭(18、19日)、お江戸上野広小路亭(30、31日)で真打披露興行をうつ。詳細は電話03-5373-0436、つる路&かんきだん事務所まで。それに先立ち9月2日の日曜日、真打興行の無事と成功祈願のため、講談ゆかりの地、薬研掘不動院(午前11時予定)、湯島天神(午後2時予定)へ巡行、参詣。パンパンパパンパンそして、竹林舎青玉青春の日、小林由紀子の名前で看板女優を勤めた東京キッドブラザーズの旗揚げの地、花園神社を巡行、参詣(午後4時予定)、そしてそして、興行の宣伝ビラを配りながら靖国通りをお囃子とともに練り歩く、とか。
 「レポーターじゃないけど、現地取材をして、自分で話を作って、つまり作家をして、脚色者をして、演出家をして、それで役者として演じるわけでしょ。これが芝居なら全部専門の人がいる。講談は全部ひとりでやるの。だから、はっきり言ったら難しいよ。昔の講談師はそれが全部できたんだ。あれだけ昔、流行ったのは、時代が違うとか何とかって人はいうけれども、同じ日本人が日本語しゃべってるんだから。いま講談が昔ほど流行らないっていうのは、講談やってる演者の責任。・・・・・」(一龍斎貞水「現代の講談師「怪談」を語る」、雑誌『國文学』学燈社9月号より)
 講談界のニューウエイブ青玉さん。連句の方もよろしく。「連句が昔ほどはやらないっていうのは、連句やってる演者の責任・・・・・」(千年)