歌仙「法然忌」の巻

都心連句会主宰の土屋実郎宗匠、湘南吟社主宰の小林靜司宗匠にお出でいただき、昨年4月に巻いた歌仙を掲載します。捌きを御願いした小林宗匠には、自、他、場、自他半(半)の区別まで後日確認させていただきました。後学のために名前の後に記入します。本当に有難うございました。(千年)


  歌仙「法然忌」の巻     小林靜司捌


濤も風もみな念仏や法然忌        小林靜司(場)
 春蝉を聴く阿弥陀三尊           川野蓼艸(場)
藤の棚手にふればやなつま立ちて     村田実早(自)
 少年磨く銀のハモニカ           瀬間文乃(他)
濡れ色に月昇りくる島の間(あい)      土屋実郎(場)
 六法全書 身に沁みており         市川千年(自)

鏡中の吾木犀と匂い出づ           篠見那智(自)
 ピエロ三人踊る天井             神山みち(場)
紅の絹のシーンを片腕に               文(他)
 アドレス破るホテル海猫              仝(自)
クーデター明日の神話に突き進め           靜(半)
 飛鳥の時代(とき)を刻む漏刻           千(場)
風紋に注ぐ月光冴えかえり              那(場)
 燗熱うせよ炉火強うせよ              仝(半)
角番の大関膝をいたわりて              実(他)
 錦絵ひとつお宝とする                千(自)
道の駅花も盛りの左富士               実(場)
 うつらうつらと翁永日                文(他)
ナオ
麗かに讃美歌河で唄いたる              千(自)
 国境封鎖超える白蝶                文(場)
医師団にけたたましくもベルが鳴る          実(他)
 郵便受に伝言を入れ                文(自)
落語でも聴いてみるかと末広へ            千(自)
 峠を巡るバスはのろのろ              み(場)
瀧業の草履きちんとそろえあり            靜(場)
 日焼けの漢長き揉上げ               那(他)
愛語るその時誰もピアニスト             み(半)
 地上に降りた天使そのまま             実(場)
恩師より詩集贈られ月まどか             千(自)
 指を染めては紫蘇の實を摘み            文(自)
ナウ
団栗も落ちて本郷通り裏               千(場)
 露をしとどに信楽の壺               那(場)
ゴルフより碁に鞍替えもまたよろし          実(自)
 塾かけもちの子等に春燈              み(他)
花の風獣の耳の聡きこと               靜(場)
 干潟はるかに浚渫の船               実(場)

    (平成十八年四月二十二日首尾 於東京杉並・遊空間)