短歌行「鷹放つ」の巻

ニッポニアニッポン鳴らせ爽籟を  文乃
 能舞台より眺む新月         しづ
長き夜の枕に言葉降りつもる     那智
 木の香まとはる山の生活      千年

雨粒の少し残りし金蓮花       青玉
 曇り硝子に指で書くDEATH       文
背鰭もてつらぬき通す初一念      那
 思ひあまりて鷹放つ時         し
ついと立ち北窓塞ぐ姉素足       文
 探り当てたる恋の隠し処        千
花少し動いて蛇のとおりゆく       文
 手に手を取つて逃水の中        青
ナオ
春惜しみ頭ノ中将薄笑ひ        蓼艸
 解散風の吹き渡る日々         青
本物を見極めがたきこの世なり      し
 健康診断列の短き            文
神仏も綿菓子を召せ夏祭         艸
 手招きしてる絽羽織の女        青
落下する月抱き止めよ君の腕       文
 おぶはれてみて覚悟する秋       し
ナウ
雁遠くなりゆく記憶また遠し        艸
 ワインボルドー冷たくし給へ       那
咲きました花の便りの貴船より      艸
 段駄羅談義春の暮れゆく        し


(千年捌 平成二十年九月二七日首尾 於・西荻窪 遊空間)
 
「段駄羅」五七七五の七七を同音異議にして遊ぶ。輪島塗りの職人さんたちが作業中に嗜んでいたようだ。
 例「秋の辺に吾亦紅咲き/我も子兎/ともに跳ね」(織田道代) 最後の五をいただき「ともに跳ね端よりタンゴ/花より団子/うれしいな」(千年)と続けるらしい。道代さんは、ああノ会での紋女さん。いろんな言葉遊びを探求されているようだ。

ウラ六句目「恋の隠し処」は、光田和伸先生の画期的な徒然草考察論である「恋の隠し方」(青草書房 03-5772-0761)を丁度読んでいたなかでいただいた言葉。しかも、蓼艸さんがこの本の書評を「れぎおん」(編集発行人 前田圭衛子)の今度の号に書かれたとのこと。(千年)