半歌仙 海鼠と月

春陰や太極拳の浮き始む      千年
 角を曲れば満天星の花        文乃
巣立鳥産毛は風に遊ばれて      青玉
 今日一日は読書三昧         しづ
大鏡かかげて月を迎え入れ       文
 冷ややかな刃をあてる顎鬚      あのこ

外つ国のもろこしの値の上がるらん    千
 エコがエゴへと変わる世界よ      文
萍をかき分けてゆくヌートリア       あ
 君の素足を抱え歩めり          青
廻廊で誘はれ未知と遭遇す        し
 海鼠と月が語り合ふ宵         文
書の中に意味するものとされるもの    あ
 聖火と供に走る警官           千
若僧の青き頭の二つ三つ         文
 杓で飲む酒際限もなく          し
静々と降り積もりゆく花筏        青
 床上げ祝ひ櫻鯛買ふ           文


(千年捌 平成20年4月26日首尾 西荻窪・遊空間)